社会通信教育における『へだたり』に関する考察(古壕典洋、東京大学大学院)

2012/07/06

古壕典洋(東京大学大学院)の論文、「社会通信教育における『へだたり』に関する考察―生成期の議論に注目して」が、「日本社会教育学会紀要」第48巻(2012年)に採択されました。


■概要
 本稿の目的は、社会通信教育における「へだたり」という概念を考察することにある。その際、本稿では、生成期の議論を対象とし、IFELの資料を用いながら、政策立案者や通信教育アクターが、「へだたり」をいかに捉え、「へだたり」を前提とする教育・学習行為の非同時性をどのように規定していたのか、という側面に注目した。
 考察の結果、本稿では、第一に、彼らは社会通信教育が「へだたり」を有するがゆえに、「宿命的な短所」「本質的欠陥」を抱えていると認識したこと、第二に、彼らは「働きながら学ぶ」者を、一方で諸制約ゆえに学習が困難な人として、他方で「志操堅固な人」という能動的な学習者として捉えていたこと、第三に、彼らは「通信学生の父」という人格的な教育者像を提示したこと、第四に、「へだたり」を正当化しようと試みる彼らの議論が転倒した議論であったこと、を明らかにした。
以上から、本稿では、社会通信教育は教育・学習の自由を担保する「へだたり」を有するがゆえに、循環的矛盾を招喚し、学習主体に回帰する教育であるという、社会通信教育の構造的な問題を明らかにした。


【本件に関するお問合せ先】
日本通信教育学会事務局
担当:小林
E-mail:kobayashi@digital-knowledge.co.jp

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