第61回研究協議会を終えて(小林建太郎、デジタル・ナレッジ)

2013/12/18

日本通信教育学会 -第61回研究協議会報告-

 日本通信教育学会第61回研究協議会が、桜美林大学四谷キャンパス地下ホールにて2013年11月16日(土)に開催されました。参加人数は、会員34名一般12名の計46名と昨年に比べ会員の参加数が大幅に増加いたしました(昨年は、会員19名一般20名の計39名でした)。今年は、昨年の研究協議会以降に新規入会された会員の参加も多く、本学会の新しい潮流が感じられる有意義な協議会が開催できたのではないかと思います。当日は、研究発表が5本に加え、講演やパネルディスカッションも行われ、通信制高校から通信制短大、通信制大学、通信制大学院まで幅広い分野の発表、議論が活発に展開されました。来年は更に多くの皆さまにご参加いただき、また研究発表分野の幅も広げ、更に大きな研究協議会の開催を計画しておりますので、会員の皆さまには研究発表への応募を期待すると共に、講演やシンポジウムの企画提案など、研究協議会へのご意見ご要望もお聞かせ願えればと思います。
 それでは、研究発表や講演、パネルディスカッションなどについて、ご報告いたします。
 白石会長による開会挨拶の後、午前は、2本の研究発表が行われました。1本目の特別研究発表では、東京学芸大学大学院の土岐会員による発表の後、指定討論者の神奈川県立大和西高等学校の手島会員と討議が行われました。会場との質疑応答も活発に行われ、予定時間の80分では足りないほどの発表でした。2本目は、名古屋大学大学院の内田会員による研究発表と質疑応答が行われました。こちらも活発な討議が行われ、30分という時間設定では短すぎるという今後の課題も明らかになりました。
 昼食・休憩を挟み、午後は、3本の研究発表が行われました。この日3本目は、星槎国際高等学校の藤本会員による研究発表、4本目は、愛知県立旭陵高等学校の石川会員による研究発表が行われました。ここまで午前から続いた4本の研究発表はいずれも通信制高校に関するもので、昨今の通信制高校への関心の高まりが感じられる発表でした。5本目となる最後の研究発表は佛教大学の篠原会員によるもので、通信制大学の休学者を含む学生調査から「リポート未提出者は休学者の予備軍になっているとも考えられる」という重要な結果が発表されました。
 5本の研究発表後は、看護学の博士で看護師・随筆家である宮子あずさ氏の講演が行われました。通信制短大から通信制大学、通信制大学院までのご自身の体験について笑いを交えながら楽しくお話しいただき、あっという間の1時間でした。講演の中で紹介された博士論文のテーマにサルトル哲学を選んだ理由には、会場から多くの関心が寄せられましたので、発表資料から一部を転記し報告いたします。「くだいて言えば、私はだれも恨むことはない、ということだ。私の身に起こることはすべて私によって私の身に起こるのであり、それがどんなに厭わしいものであってもすべて私のものなのである。むろん私がこの家庭、この社会、この世界にこのような者として生まれてきたこと、これは私の責任ではない。しかし生きている以上、私がこのような者として生まれてきたことをどう考えるか、これは私の責任である」(矢内原伊作(1967):サルトル―実存主義の根本思想,中央公論新社(中公新書124),東京.)
 最後は、通信制大学院を修了した社会人によるパネルディスカッションが行われました。「社会人の学びの場としての通信制大学院を考える」というテーマで行われ、これまでの統計的なデータからは見えてこなかった通信制大学院の実態を探るという趣旨に沿った活発な議論が行われました。パネリストは、武蔵野大学大学院通信教育部人間学研究科人間学専攻修了の稲垣諭会員、京都産業大学大学院経済学研究科(通信教育課程)修了の木村知洋会員、京都造形芸術大学大学院芸術研究科(通信教育)芸術環境専攻修了の藤江慶一郎会員の3名で、いずれも企業に勤めながらの修了であり、社会人が大学院で学ぶことの意義などが議論されました。次なる通信制大学院に所属しているパネリストもいるなど現在進行形で「社会人の学びの場としての通信制大学院」が語られたのではないでしょうか。ディスカッションでは、「学習計画の立て方」「修士論文執筆のための教員とのコンタクト方法」「通信制と通学制の似ているところ、違うところ」「修了したことでのキャリア変化」「博士課程には進学するのか」といったことが活発に議論されました。
 研究協議会終了後は、会場を移して情報交換会が開催され、27名が参加されました。参加者の内26名が会員であり、大変有意義な情報交換が行われたと思います。特に、複数名の会員による共同研究プロジェクト企画が発足するなど、研究活動に直結した情報交換会だったのではないでしょうか。また、新規入会会員の自己紹介では自身の研究分野のことだけでなく、通信教育との出会いなどが発言され、ユニークな人柄を垣間見ることもできました。寺下会員の挨拶では、諸外国に比べて日本の社会人大学院入学者が増えていない現状への憂慮と、そのために本学会が果たす役割について発言があり、来年の研究協議会に向けて新たなスタートを切るよいテーマをいただけたと思います。
 最後に、数ヵ月に渡る研究協議会の準備や当日の会場運営に早朝から協力いただいた石原会員、小暮会員、田島会員、寺下会員、山鹿会員に感謝を申し上げて第61回研究協議会の報告といたします。
(小林建太郎 デジタル・ナレッジ)

「日本通信教育学会報」(通巻41号)より



【本件に関するお問合せ先】
日本通信教育学会事務局
担当:小林
E-mail:kobayashi@digital-knowledge.co.jp

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