通信制の教育方法は「柔軟」でない

2017/07/20

 全国の公立通信制と一部の私立通信制で構成される全国高等学校通信制教育研究会(全通研)は、平成28年1月25日『通信制高等学校の適正化を求める声明―通信制高等学校における教育の充実・発展のために』と題する声明を発表した。
 
よく通信制の教育方法について、通信制では全日制・定時制よりも「柔軟」(フレキシブル)に教育を実施できると主張されることがある。しかし、通信制の教育方法については、通信制専用の文部省令である高等学校通信教育規程に、全日制・定時制にはない規制があるほか、さらに高等学校学習指導要領でも、1単位あたりの添削指導・面接指導の回数・時間数など、全日制・定時制の「授業」よりも格段に細密な規制をおこなっている。
 
学校教育法施行規則では、全ての高校に共通の規定のうち一部の条項に限って、通信制に「適用しない」と規定している(第101条第2項)。この規定によって通信制に適用が除外される条項については、「適用しないことができる」のであれば「適用することもできる」が、「適用しない」と規定しているのであるから、通信制には「適用できない」。
 
通信制では、高等学校通信教育規程や高等学校学習指導要領の定めるところに従って、全日制・定時制と異なる教育方法で教育を「実施することができる」のではなく、全日制・定時制とは異なる教育方法で教育を「実施しなければならない」のである。
 
もし通信制の教育方法について、全日制・定時制よりも「柔軟」(フレキシブル)に教育を実施できると主張されることがあるとすれば、それは、高等学校通信教育規程や高等学校学習指導要領を逸脱しているからに他ならない。

(愛知県立旭陵高等学校:石川 伸明)
(「日本通信教育学会報」通巻46号より)