通信制高校の研究スタイル

2017/12/13

 自分の専攻は「学校地理学」だと思っています。都心に開設された学習センターは「オフィス立地」の新しい形態です。通信制高校の本校が過疎地域の統廃合された学校の跡地に開設されることは、「地域おこし」につながり、学校の持つ地域での「拠点性」が維持されます。各地に「立地」する通信制高校の「本校・分校」がどのような条件・理由から開設されたのか、生徒にどんな学びを保障するのか、その地域の教育に与えている影響、課題や問題点の指摘を目的としています。そのため、各県の「通信制高校の設置基準」と各校の「学則」を集め、文献・地図検索のうえ現地に行きこれらの施設の状況を確認し、場合によれば訪問・聴き取りを行っています。研究を始めたころ(2010年前後)には友好的に迎え入れてもらえましたが、最近では事前にアポを取ることが難しい場合が多く「飛び込み」で訪問しています。相手にとっては迷惑な訪問かもしれませんが、入り口で断られればそれまでで、中に入れてもらえればしめたものだと思います。今まで何回か訪問して実情を聞き取りました。
 
こんな研究手法は通信制高校の研究者としては少々異質な存在だと思っています。多くの研究者は通信教育に従事している(していた)事を踏まえての研究か、様々なつながりから通信教育を行っている現場に「参与観察者」として入っている場合が多いと思います(特に学生・院生の場合)。それぞれ独自の視点から実際に行われている教育活動について観察されて問題点を指摘されています。教育学研究には教育現場についての観察が必要です、そういうことがあるからこそ現代の教育の実情が明らかにされ、課題や問題点が浮かび上がってきます。研究発表を聞くたびに、このことを感じています。教育現場を踏まえての皆さんの研究報告に期待しています。
                                   (佛教大学大学院修士課程 秋山 吉則)
                                 (「日本通信教育学会報」通巻49号より)