通信制高校で探究的な学びを深めるために

2020/12/25

 2019年8月に教育ドキュメンタリー映画「Most Likely to Succeed」の上映会に参加した。この映画は「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものか?」をテーマに,アメリカのHigh Tech HighというチャータースクールでのPBL(Project-Based-Learning)が取り上げられている。試験の代わりに開催される学期末の展示会に向けて,クラス単位で作品制作などのプロジェクトに取り組む過程で成長していく生徒の姿を目にして,自分も実践したいと考えた。
 私が勤務する通信制の旭陵高校には,対人関係に苦手意識を抱える生徒が多く在籍し,面接指導でグループワーク等の生徒間の対話が必要となる協働的な学習活動を取り入れることが難しいという課題がある。この課題を解決するために,2020年4月からチャットツール「Slack」を活用したPBL(名古屋の魅力向上・発信プロジェクト)に総合的な探究の時間で取り組んでいる。Slack上にワークシートの写真をアップさせ,相互にコメントさせることで,生徒に心理的プレッシャーを与えることなく協働的な学習に取り組ませている。11月の学校祭を中間発表会とし,ポスター発表の機会を設けた。中間発表に向けてポスターをタブレットで作成したり,紹介動画を作成したりする中で,探究的な学習に取り組ませることができた。また,制作過程からオンライン上で共有し,相互にコメントしあう中で協働的な学習に取り組ませ,学びを深めさせることができた。現在は,中間発表会でのアンケート結果を踏まえ,最終提案書の作成に向けた改善に取り組ませている。
 ICTの活用は学習者をempowermentするという効果がある。対面しての対話が苦手な生徒でも,オンライン上のチャットであればディスカッションが可能であることが今回の実践で明らかになった。今後も通信制だからと諦めることなく,ICTを活用しながら生徒の学びの質と機会を保障していきたい。

(愛知県立旭陵高等学校 加藤圭太)
(「日本通信教育学会報」通巻55号より)