通信制高校の真髄

2021/06/30

 文科省の問題行動・不登校調査によると、2019 年度に不登校が理由で小中学校を長期欠席した児童生徒は18 万1272 人で過去最多を更新した。また、中学生全体のうち3.9%は不登校生である。こういった不登校生の中学卒業後の進路として、通信制高校が選ばれることが多い。一般的には、「通信制高校は登校日数が少ないから、学校に通いづらい不登校の生徒でも卒業することができる」と考えられている。私自身も、実際に自分が通信制高校に勤務するまでは、同じように考えていた。
 しかし、実際に勤務してみると、通信制高校の捉え方が大きく変わった。生徒たちは、通信制高校で、ただ「高校卒業」だけを成すわけではない。生徒たちの多くは、通信制高校という学習の場において、自分の居場所や存在価値を認識し、自己肯定感や自己有用感を得ている。そして、基本的知識の学び直しや、人や社会との関わり、新しい学びへの挑戦等に、自ら進んで取り組み、自己の内面の成長につなげている。不登校の時と同一人物とは思えない程、生き生きと目を輝かせている生徒が多かった。
 このような生徒たちの変容は、「通学日数が少ないこと」によるものだとは考えにくい。通信制高校の様々な特色や学習システムの中に、不登校生徒たちが自分らしさを取り戻すための何かがあるのだと思われる。つまり、「登校日数が少ないこと」以外に「通信制高校の真髄」が存在すると考える。この「通信制高校の真髄」の中に、不登校生徒を増加させ続けている現在の教育に対する大きな示唆が含まれているのではないだろうか。これを研究テーマとして、知見を深めていきたい。
(広島市立五日市南中学校 本田弥生)
(「日本通信教育学会報」通巻56号より)