通信制高校の現状と課題

2020/12/25

 私は、通信制大学を卒業した。当時、大学側から与えられたテキストが理解しにくく、理解しやすいテキストを探すのに苦労し、自学自習がなかなか進まなかった。そして、このような自学自習のしづらさは、通信制の大学だけではなく、高等学校でも同じことが言えるのではないかと考えた。そのため、私は、通信制高等学校において使用することが義務付けられている学習書(高等学校通信教育規程では「通信教育用図書」とある)について研究を行うことにし、学習書の研究で修士論文を作成、現在も研究を続けている。具体的には、「学習書」の分析を行い、「学習書」の特徴、工夫のポイント、課題を検討してきた。現在は、通信制高校で数学の教員も行い、「学習書」の執筆にも携わっている。
 私は、常に通信制高等学校の教育内容・方法はどのようであるのがよいかを考えている。特に従来型ではない通学型の通信制高等学校ではどのようになっているかに注目している。ICTが浸透した中、通信制高等学校の在り方が多様化している中にあっても、高校教育の中心に教科指導があるという観点から教育内容・方法の追究は必要であると考えている。
そのような問題関心において、研究動向を見てみたい。先行研究では、通信制高等学校における教育内容・方法についての研究数が減少傾向にある、という。特に、「通信教育用学習図書その他の教材」ついての研究数が減少しているという。このことについて、私は、「通信教育学習図書その他の教材」から「ICT」の活用方法に関心が移行したのではないかと予想している。それでも、通信制高等学校の中心に「通信教育学習図書その他の教材」があることは変わらず、その視点での追求は必要であると考えている。
 私は、通信制高等学校の教員兼研究者という立場から、使用する立場と執筆側の両者の視点を持って研究と実践を行って行きたい。

(星槎国際高等学校 高牧裕美)
(「日本通信教育学会報」通巻55号より)